千羽づる 

 

 

監督 神山征二郎

キャスト

倍賞千恵子…佐々木重子

広瀬珠実…佐々木禎子

石野真子大関京子

 

 

これは広島の「原爆の子の像」のモデルになった

12歳で亡くなった佐々木禎子さんのお話。

2歳の時に被爆し、10年後にピカの原爆症が発症するんだ。

 

89年作で見たのはニューマスター版。

戦争で兵士同士の戦いならいざ知らず、

罪もないなんら関係ない、ただ広島に住んでた小さな子が

苦しんで不治の病で死んでいく。

しかも原爆投下のすぐでなく、10年後ってねえ。

 

これ見て思った。

私が生まれた世代も、戦争から少し年月が経ってる。

映画でしか知らない。

日本の戦争映画で代表作はたくさんあるが、

特に広島長崎の原爆についての戦争映画として

やはり徐々に製作は少なくなってはきている。

 

これから10年先、20年先を考えると

類の映画は作られるのかもしれないが

リアリティがなくなってくるんじゃないかと。

存命している人もいなくなっってきてるので

語り部の継ぎ手しかいないだろうし。

 

戦争映画を数多く撮影してきた映画監督も

いなくなってくるしね。

 

とすると、人から語られた話と、写真と、資料と

今までの映画などの部分からでしか

原爆の酷さがわからなくなってくる。

 

決して関係なくはない歴史だし、

目を背けてはいけない史実だし、

こんな悲しい出来事を二度と繰り返さないためにも

ウエットに伝えていかなきゃいけない。

 

この映画を見てる時は平常心で見てた。

が、何日か経っても禎子ちゃんの亡くなった姿が頭に残る。

禎子ちゃんは被ばくによる白血病に罹ってしまったが

白血病だけでなく、がん死も多かっただろう。

 

禎子ちゃんが亡くなった時、

母の重子は泣いてなかった。

危篤を知り駆け付けた同級生に禎子ちゃんが折った鶴を

あげていた。

我が子が苦しみ、一緒に病に戦い、

禎子ちゃんが逝ってしまった直後は

きっと一瞬だけ放心だったろう。

子供を亡くした辛さ、悲しみは

もう少し後から押し寄せてくるんだろう。

 

私の義兄が事故で亡くなった直後、

義兄の母はやはり泣いてなかった。

冷静だった。

私は幸いにも、その経験はないが、

自分の命より大切な子が亡くなったら

悲しむ前に違う感情が襲ってくるんだろう。

 

その後に悲しみの感情は来るだろうが

誰よりも癒える気持ちは遅いのだろう。

 

禎子ちゃん12歳。

被ばくしてなければ、今も生きてたかもしれない。

楽しい人生を送れたであろう。

原爆、やはり許せない。

 

 

 

 

千羽づる(ニューマスター版)