空白 

空白

 

 

監督 吉田恵輔

キャスト

古田新太添田

松坂桃李…青柳

寺島しのぶ草加

 

 

あらすじ

女子中学生がスーパーで万引き未遂を起こした。

店長に手を引っ張られ、事務所に連れていかれるが

いきなり店外へ逃げ出す中学生。

追う店長。

逃げていく途中、中学生は停まっていた車の脇から飛び出し、

走ってきた車に撥ねられ、その後トラックに引き摺られ即死。

娘の父親は怒りの矛先を店長に向ける。

葬式に訪れた店長だが、父親から激しく詰め寄られる。

その父親の異様な行動をマスコミは面白おかしく報じる。

気性の荒い父親、そして謝り続ける店長。

彼らは時として加害者であり、被害者でもある。

彼らの苦しみは何処に向かって行くのか。

 

 

これは隠れた名作でした。

ずっとお気に入りリストに入れといたままでした。

こんな良作が埋もれていたとは。

 

ものすごく考えてしまう映画です。

自分が事故で死んだ子供の親ならば。

自分が店長だったら、その時の対応は。

自分の友人や職場の人が苦しんでいるならば。

自分が不運にも車で人を轢いてしまったら。

自分の子供が車で人を轢き、相手方が死んでしまったら。

自分の慕う人が被害者遺族になったら。

 

万引き云々はともかく、

交通事故は予期せぬことで

いつ自分が加害者になるか被害者になるかもしれない。

当事者も含め、その周りも巻き込まれる苦悩。

こんな身近な題材をよく取り上げてくれました。

 

前半はキツイ。

さっき書いたように、もし自分が〇〇だったらと思うと

彼らの苦しさが伝わってきそうで

見ていてツライものがある。

父親の荒々しい行動も共感できる。

店長のいたたまれなさも胸がつぶれる思いになる。

草加部さんは…やりすぎな面があったが気持ちはわからなくもない。

 

あらゆる人々の気持ちが

あらゆる角度から映し出されているので

どんどん見ていてしんどくなってくる。

 

真っ暗でざわついていた気持ちに

後光を射すようなセリフが!

最初に中学生を轢いてしまった運転手の母親。

あそこまで悟れる心情になれるだろうか。

自分の娘の葬式中に訪れた添田に対し、

それでも代わりに謝罪ができるものだろうか。

オトナの対応を通り越して、悟りの境地ですわ。

 

私には無理そうだ。

なぜって、私は添田と同じようなタイプだから。

感情をそのまま行動に移してしまう小さな人間だから。

娘の死後、狂気に近いような行動もとっていたが

至ってそれはよくわかる。

あと、弁当オーダーミスで切れてしまった青柳。

この心情も痛いほどわかる。

一番わからなかったのが草加部さん…。

でもね、草加部さんのような人は時として

神経がまいっちゃう病気にかかりやすい。

 

添田の舎弟のような野木君の存在が

しんどい流れの中で唯一、心が和むキャラでした。

 

すべての俳優さんたちが良質なキャスティングで演じてます。

ガツンと響く映画でした。

 

 

 

 

 

空白