ツバメの惨劇

この時期、ツバメが巣づくりしてヒナが生まれて

飛び回ってる。

おしゃべりツバメさんたちが

ものすごい高度な回転しながら空を飛んでる姿に

「自分も鳥になりたい!」

などと思ってた。

うちの職場にもGW前からツバメが巣を作り出して

無事、ヒナも生まれ

親ツバメがせっせとエサを持ってきて与えてました。

そんな矢先。

事務所からローテーションである建物の担当になったある日。

テクテクとその建物に近づく私。

見るとなーんだか黒いゴミみたいなのが散らばってる。

近づいていくと

あきらかに鳥の羽がバラバラになってて、しかも血痕まである。

………

もしや!!!

呆然と立ち尽くしてる私の前に

遊園地スタッフの人がホウキとチリトリ持って現れ。

「たぶん、昨日の夜にやられちゃったみたいなんですよね」

「昨日まではなんでもなかったですから」

「ヒナが大きくなるのを見計らって襲ったんでしょうね」

やった奴はカラスです。

カラスは水鳥で生まれた卵も加えさって

食べたりしてるんです。

そのカラスも今は子育て中で近くにヒナカラスの巣もある。

野生のこのやり取りは

人間にはどうしようもできない。

ツバメを襲った憎きカラスですが

カラスだって生きてくのに必死。

子カラスに栄養つけさせようと必死。

でもねぇ、

わかるんですけど

やっぱりショックですよ。

羽根三昧と血痕見たら多少のショッキングうけますってば。

スタッフさんと一緒に私も血痕をモップで拭きました。

悲しい気持ちを抑えながら。

巣は6分の1ほど壊されてました。

恐怖でほかのツバメはもう戻ってこないだろうと思ってました。

でも

クルクル回りながら戻ってくるツバメがいたんです。

親ツバメなのか、ヒナが大きくなったツバメなのか

大きさが一緒なんでどっちのツバメかわかりませんが。

巣が壊されてるんで

足が引っ掛からなくて

壁にボルダリング状態で止まってます。

去年つくられた巣が

壊された巣の横にあるんですが

その巣をのぞきこんで首傾げてます。

「なんか違うぞ」って思ってるんでしょう。

そのツバメたちは

襲われた最中に、その場にいなかったんでしょうね。

ことの重大さがわかってないようです。

ちょっと飛んで行っては壊された巣にとまれず、

ちょっと飛んで行っては別の巣をのぞきこんでる。

それを何度も何度も繰り返してる。

いつになったら

もう自分たちの家が壊されて住めないんだ、っていうのを

認識するんだろう。

っていうのを見ながら考えてたら切なくなってきました。

自然淘汰はどうにもならない。

どっちが悪いってわけでもない。

厳しいな、厳しい世界で生きて行ってるんだな。

事務所に報告して

聞いてる人たちは「かわいそー」と言ってました。

たぶん私も聞くだけだったら同じように「かわいそー」

と思ってたはず。

でも実際に現場を見たら

かわいそーだけでは済まされぬ

胸がつぶれる思いに襲われてしまって

ずっと顔を歪ませてました。

厳しいな…

襲われた子も

襲われたことをしらないでいるツバメも

悲しすぎる。